北川の良さは温かさ スナック夏海・木村さんご夫妻 北川びと
木村修一さん・なつみさん
夏海外観
大人気の焼きおにぎり
和気あいあいのカウンター
季節の揚げ物
いつも元気なひばりちゃん
賽の神様

午後7時を過ぎる頃「夏海」の看板に明かりが灯る。北川の夜の始まりだ。階段を上がった店内は広々としたスペース、カウンターには大皿に盛られた手作りのお総菜が並ぶ。
「いらっしゃいませ、さぁどうぞ~」明るい笑顔で出迎えてくれたのは、木村なつみさん。フワッとやさしい雰囲気のママさんだ。
「やぁどうも、いらっしゃい。」ちょっと照れくさそうなのはご主人の修一さん。地元の人たちの間では「生き字引」の愛称で通っているほど、北川の歴史や文化に詳しい人なのだ。

なつみさんは意外にも山梨県石和温泉の出身。知人の紹介で出会って、北川に嫁いでもう34年になるのだそうだ。知り合った当時、山登りが趣味だった修一さんは電車を乗り継ぐのにも慣れたもの、とれたてのサザエやアワビをお土産になつみさんに会いに行ったのだとか。
「北川に来たばかりの頃は、私も早く『北川の人間』として認められたくて、お姑さんと一緒に農作物を持って旅館を回ったりしたんですよ。もちろん心細いこともあったけど、みんな本当に親切にしてくれたの。山の生活から突然海の生活に変わったから、カルチャーショックもいろいろあって。新鮮なイカなんて山梨では見たことがなかったでしょう、『どうして真っ白じゃないの?山梨のイカとちがう!』って主人に言ったりしてね。」と笑うなつみさん。

昔からなにか商売をするのが夢だったそうで、結婚するときに「いつかお店をやらせてね」と約束。約束通り「夏海」をオープンさせたのが平成三年のことだ。以来12年、お客さんに喜んでもらえるよう、あちこち食べ歩いては料理を研究、自分なりの味を作り続けている。
「どこかで美味しいものに出会うと、素直に聞いちゃうことにしてます。どうやって作るんですか?って。私は素人だから聞くことに恥なんてないし、新しい味に出会えた!って、もうそれだけで楽しくなるの。」
テーブルに運ばれた料理はどれも丁寧に作られていて、真心を感じる味。料金も良心的で驚くお客さんも多いのだとか。安心して飲んだり食べたりを楽しめるうれしい店だ。

「北川に来たら帰るまでが旅。だから、観光客の方には最後まで良い印象を持って帰って欲しいなぁと思うんです。泊まった宿がすごく良かったのに、夜飲みに出かけたらがっかりしたよ、なんてことになったら大変ですものね。でも、ほんとに町中の人が歓迎してるって雰囲気なんですよ。たとえば駅で、観光客の方が宿までの道を迷っていたりしたら、どうぞついでですから送っていきますよって自然に声をかけますしね。こういうあったかい雰囲気は昔から。私も山梨から来て、人の温かさに何度も救われました。」
「ほんとにその通り。北川はいいとこよ~。ママの人柄もね、まじめでやさしい人なの。だから初めて来たお客さんだってすぐ馴染んじゃう。なごめるお店なんだから!」と、九州出身のお店のアイドルひばりちゃん。とにかく元気で明るいキャラでお客さんにも大人気だ。

さて、北川の歴史や文化のことならこの人に聞け!というくらい昔話をたくさん知っている修一さん。残念ながらほとんど店には顔を出さないのだそうだ。三ヶ所あった共同浴場に小田原提灯をぶら下げて入りに行った話、塞の神さんの話、村役の右衛門さんが伊能忠敬の地図作りを手伝った話・・・などなど、公的に残っている資料が少ないだけに、尽きることのない昔話はどれも興味深くて、聞いているだけでワクワクしてくる。
幸運にもお店で修一さんを見かけたら、昔話をさりげなくねだってみては?
編集部でもこれから少しずつインタビューを重ね、「北川昔話」のコーナーで随時紹介していく予定なのである。
左の一番下の写真は、子供達が歌を歌いながら大漁祈願したという北川の道祖神「塞の神」。店の裏手に祀られている。

北川温泉観光協会